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病めるソニーへの処方箋~井深大著 ”わが友本田宗一郎” ~

2013年6月13日の日記

大学祭があり,そこの古本市で見つけました。1995年刊行の文春文庫の1冊です。前から気になっていましたが,買っていませんでした。

ソニーの創業者である井深大氏が本田宗一郎氏の訃報に接して書いた記事や過去の記事をまとめたものです。この2人が良き友人であり,ライバルであったのはよく知られています。かたや大学卒のエリート,かたや田舎の町工場の親父と言う立場を超えて,優れた技術者として,また経営者として相通ずるものがあったのでしょう。

刊行されたのはバブルの直後で,まだバブルの余韻が残り,それほど景気が悪くなかった頃の本です。この後,失われた20年と呼ばれる低迷の時代が続いています。今の時代だからこそ,読むべき本なのだと思いますが,残念ながら文春文庫版は絶版になっています。今はごま書房新社から出ているようですが,アマゾンで値段を見てびっくり。1,365円もします。

やはりもの作りがこの国の基本で,この本でも力説されています。ものを作って売って儲けてなんぼ,と言う世界だと思います。それが土地が金を生み,金が金を読んだバブル景気の頃は本当におかしな時代だったと批判しています。

"ものをこしらえるというのが,本当の実業であって,それ以外のものは,たとえ役所であろうと,それに付属する補助機関にすぎない。まして,証券会社や銀行など,ものをこしらえない人がイニシアティブをとるなんてことに間違いがある"

という主張は非常に説得力があります。私もその通りだと思います。

ソニーはだいぶん前から銀行や保険を始め,この創業者の警句を無視しているような印象を受けます。

また,井深氏も本田氏もまた,幼児教育に力を入れていたことはよく知られていますが,特に,本を読むだけ,教えられるだけという教育には意味がない,と言っておられます。やはり手と頭を使わないとダメだ,ということです。

"頭で知ったことというのは,しょせん,それだけのものです。知識を詰め込むことはできても,知恵にはなりにくい。" 

との主張は少々,耳が痛いです。自分もそのように実践してきたつもりですが....。 

残念ながら,今年こそソニーは黒字を出しそうですが,品川の本社ビルをリースに切り替えて経理処理上,黒字になっただけだと思います。大株主のサード・ポイントから,ソフト部門とハード部門を切り離すよう,主張され,困っているようですが, そもそももの作りの会社がソフトまでやることが問題がありそうだ,というのは容易に考えられます。ユニヴァーサル映画を手放したPanasonicの方が賢かったかもしれません。ソニー映画や金融部門も同じですね。この際,分離した方がよいんじゃないでしょうか。ソフトとハードの融合や相乗効果というのはあり得ないのではないでしょうか。

先日のNHKの番組で,出井伸行氏に面と向かって,「あなたがソニーを悪くした元凶と言われてますが」 なんてインタビューをしていました。出井氏ばかりじゃなく,彼を選んだ大賀典雄氏も大いに責任があるでしょう。もっとも,大賀氏を選んだのが井深氏と盛田氏なのですから,井深さんも判断を間違っていた,と言う気がします。

なんだかアベノミクスかなんかで円安となり,日本の製造業もひと息ついて,これから日本も復活だ,という論調の新聞も多いのですが,ソニーをはじめとして,根本的な解決につながっているのかどうか....。シャープやPanasonicも依然,薄氷を踏むような状況なのではないか,と言う気がする今日この頃です。

我が友本田宗一郎.jpg 


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