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ジョージ・オーウェル "1984年" [海外]

2017年4月10日の日記

1984年.jpg 

ジョージ・オーウェルの "1984年" を読みました。トランプ政権の誕生で米国で再びよく読まれているようです。早川epi文庫の帯にもそう書いてありますね。

全体主義国家による国民の監視について警鐘を鳴らした本です。

刊行されたのが1948年で,タイトルは4と8を入れ替えたもの,というのは有名ですね。作者のオーウェルは刊行後,1950年には亡くなっています。遺作といってよい作品ですね。ナチス・ドイツは消滅したものの,欧州に鉄のカーテンが降り,鉄のカーテンの向こう側ではナチスさながらの全体主義体制が復活していました。

現実の1984年当時,iruchanは大学生でした。大学の生協でこの文庫本が平積みされていたのを覚えています。ただ,もとから海外文庫が好きだったのに,なぜかこの本は読みませんでした。確かに,まだソ連は存在していたし,それなりに社会主義による独裁体制の怖さ,というのは感じていましたが,日本はバブルの前駆ともいうべき好景気で,日本の未来についてもいずれ米国を追い抜く,なんて論調のマスコミの影響もあり, 自分自身の将来に対しても何ら不安を感じることはなく,この本についても遠い世界の話,と言う風にしか感じられませんでした。それに,海外文庫が好き,といってもやはり明るい,ユーモアのある話が好きで,この本に書かれているような暗い世界の話,というのはどうにも好きになれませんでした。

しかし,今は確かに,この本の帯にもあるように,暗いですね。まさしく19世紀とでも言いたいような帝国主義,独裁主義,全体主義の世の中に変容しつつあります。

それに,監視社会という面では路上,至る所に監視カメラが設置され,とうとう新幹線の車内にも監視カメラがつけられるとのこと。これじゃ,うかうかあくびすらできない感じです。

iruchanも会社では監視されている,と感じる場面が多くなりました。至る所にあるセキュリティカメラは部外者だけでなく,社員を監視しているものでしょうし,メールやweb閲覧の履歴は保存され,定期的に監視されています。うっかり,ファイルを1個でも送ったり,持ち出したりしようものなら総務から呼び出しを受け,始末書だし,それどころかメールの一言一句まで監視され,一言でも会社の名誉? を損なうような内容だと即呼び出し.....という会社になってしまいました。

本書に出てくる独裁者,Big BrotherをBig **** と固有名詞を当てはめればうちの会社と同じだな,と思いました。恐ろしい話です。

時は架空の1984年,世界はオセアニア,イースタシア,ユーラシアの3つの超大国に分割され,それぞれが全体主義で支配され,お互いに戦争を繰り広げています。

主人公が属するのは英,米を中心とするアングロ・サクソン系? と思われるオセアニア国で,英国以外の欧州はロシアが支配しているユーラシアで,中国を首領とするアジア各国はイースタシアの3国に分割された世界です。

もちろん,日本はイースタシアに属しています。何か,現実にイギリスもEUを脱退しますし,日本も将来は.....と思わせる恐ろしい世界です。 

オセアニアは社会主義革命が1950年代? に起こり,以来,Big Brotherなる党首? が支配する社会となっています。そもそも,そのBig Brotherなる人物は存在するのかどうかすら不明で,声も姿も見えません。そもそも彼が生きているのかどうか,そもそも彼は人間なのか,という疑問がずっとついて回ります。

テレスクリーンなる平面TVと監視カメラを兼ねた装置が家々に設置され,政府のプロパガンダしか流していませんし,家の中の様子や声まで監視しているという恐るべき監視社会になっています。 

本書は反体制派の主人公が破滅に至るまでを描いた長編です。本当に,iruchanがいる会社もそして日本の社会も実は,このような方向を向いているのではないかとゾッとした読後でした。 


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