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Fred Watson "Stargazer" [海外]

2009年8月の日記

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フレッド・ワトソンの"Stargazer" を読みました。筆者はオーストラリアの天文学者です。日本の地人書館から"望遠鏡400年物語" として訳本が出ています。例によって日本版はまだ単行本で,文庫になっていないので,洋書を読みました。値段も1,000円以上,安いですしね。

新聞各紙で書評が出て,面白そうでした。天体望遠鏡の歴史について書かれています。ティコ・ブラーエの最初の望遠鏡から,ガリレオ自作の屈折式望遠鏡による木星の衛星の発見,ニュートンによる最初の反射式望遠鏡と続いて,19世紀のドイツのフラウンホーファーによる赤道儀式屈折望遠鏡(口径24cm)の革新的発明やロッセ卿の1.8m反射式望遠鏡(1845)など,とても面白い内容です。

カセグレン式反射式望遠鏡で有名なフランスのカセグレンって,ファーストネームが長い間,不明なくらい,謎の人物だったなんて知りませんでした。つい最近まで,ニコラスやジャンだとされていましたが,最近の研究によるとローランだそうです。

また,屈折式望遠鏡のガンである色収差の問題を解決するための,色消しレンズの発明のところはまるでスパイ小説で,実際,特許がらみの紛争がつづき,とても面白いです。

こんなことも書いてあって結構面白いのですが,1897年完成のヤーキス天文台の口径1.2m屈折式望遠鏡以降,20世紀に入ると途端にトーンダウンし,どの書評にも書いていますが,20世紀の歴史については非常にもの足りません。特に,世界最大の名前をほしいままにした米パロマー山ヘール天文台の5.1m反射望遠鏡については写真もなく,4ページを割いているだけです。

まあ,筆者自身,近年の巨大望遠鏡プロジェクトの直接の当事者なので,詳しいことが書けない,と言う事情があったにせよ,20世紀以降の望遠鏡についての記述が乏しいのは残念です。ヘール天文台については岩波文庫から"パロマーの巨人望遠鏡" というのが出ていますので,そちらを読めばいいでしょう。それと,やはり20世紀の発明である,電波望遠鏡についても同様で,電子工作マニアとしては,この辺詳しく知りたいところですが,そんなに詳しく書いていません。特に,発明者のジャンスキーがベル研に勤めていて,14.5mの波長の電波が銀河系から出ているのを発見したあたりの話は詳しく知りたいところです。一応,写真があり,T形フォードにループアンテナ? をアレイ状に接続した最初の電波望遠鏡(1932)はまた何かで詳しく調べてみることにしましょう。

巻末の解説が30ページもあったり,現在の巨大望遠鏡の資料があるのは感心です。日本のすばる(1999年完成,口径8.2m)も出ています。索引も詳しく,良書の条件を揃えていますが,それだから余計に近現代の記述が乏しいのは残念です。

 


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